演習
EXERCISES
3年生になると1人1台ノートパソコンが配られ、実践的なものづくりを学びます。
学生間の活発な議論を通じて、コミュニケーション能力、リーダーシップ能力の育成に力をいれているのが機械工学科の演習カリキュラムです。
3年Sセメスター
スターリングエンジン設計演習
[SE演習]
- 演習の目的
- 機械工学は、ものづくりに関する実学に基づく学問です。講義で学ぶ機械系四力学・設計・生産の知識を、実践を通して身につけます。スターリングエンジンは廃熱回収の方法としての応用だけでなく、熱を動力に変換するための熱力学、エンジン内部の流れを制御するための流体力学、適切な材質と形状を選定するための材料力学、往復運動を回転運動に切り替える機構のための機械力学という機械系四力学のエッセンスが組み込まれた教材です。また、それを統合して設計し製作する設計工学・生産工学の実力も身に付けます。
- 演習の内容
- 4~6人1組のグループに分かれ各班オリジナルのスターリングエンジンをデザイン・製作します。
約2週間分の午後の演習の時間を用いて、コンセプトの設計・四力学に基づいた設計・製図・加工・組立・計測の全工程を行います。
コンセプトの設計から全て学生に委ねられているので、「パワーにこだわったもの」「効率化にこだわったもの」「おもしろい動きにこだわったもの」「軽量化にこだわったもの」この様に多種多様なエンジンが製作されます。
実際の加工では旋盤やフライス盤などの大型機械も多く用いるため、教職員やTAが総動員でサポートする機械系の名物演習授業です。設計・製作のみでなく、全学生と担当教職員が集う発表会でコンセプトのアピールポイントや作品の集大成を披露します。
スターリングエンジン演習以外にも、各種実験・計算機の演習が設定されており、実際に「もの」を作る実用的な演習が多いことが、他の工学部にはない機械系の特徴です。
スターリングエンジン演習作品の展示紹介映像 (HASEKO-KUMA HALLサイト)
スターリングエンジンとは?
スターリングエンジンとは、外部の熱を取り込んで動力とする外燃機関です。一般にエンジンと聞くと、自動車のエンジンなど内燃機関をイメージするかと思いますが、スターリングエンジンはさまざまな熱源を利用でき、騒音が少なく、排気ガスがクリーン、などの利点があり発展が期待されています。
3年Aセメスター
メカトロニクス演習
[メカトロ演習]
- 演習の目的
- 現代のほとんどの機械製品は、電子制御を用いたものばかりです。スマホなどの情報機器、エアコンなどの家電製品はいうまでもなく、自動車などのモビリティも、生産や生活を支えるロボットも。これらの機械を電子制御する学問のことを、機械工学(メカニクス、mechanics)と電子工学(エレクトロニクス、electronics)を融合させた和製英語でメカトロニクスと言います。本演習では、センサ(光センサ、画像センサなど)、アクチュエータ(モータなどの動力装置)、それらをつなぐプログラミングと電子回路を組み込んだ「メカトロおもちゃ」を、コンセプトから設計し、製作、発表します。この演習を通して、何を作るか(What to)とどう作るか(How to)の両方を発想する創造設計のプロセスを学びます。
- 演習の内容
- 「とにかく面白いメカトロおもちゃ」を約10回の演習時間の中で、チームで協力しながら、自らのアイデア、好奇心、想像力をもとにでゼロからデザイン・製作します。
スターリングエンジン演習がでは、金属加工に基づいた制作であるのに対して、メカトロ演習では、3Dプリンタ、木工やプラスチックのレーザカッタ、手作業での組み立てなど、手段の幅が広がります。2020年より、発表を制作動画としたことで、「メカトロおもちゃ」の機構のアピールだけでなく独自の世界観もデザインする創造設計演習となっています。動画発表に加えて2022年度から復活した現場現物デモ発表会では、日本を代表するものづくり企業からの来賓も招き、投票・表彰も行い、笑いや歓声が絶えない演習です。
3年Aセメスター創造設計演習内選択演習 流体シミュレーション演習
- 演習の目的
- 数値流体力学(computational fluid dynamics, CFD)は、流体現象の支配方程式(連続の式、Navier-Stokes方程式等の偏微分方程式)を時間的・空間的に離散化し、コンピュータを用いて数値的に流れ場を解析するシミュレーション手法です。流れが関わる諸問題は、車体の空力特性や原子炉の熱流動、電子デバイスの冷却等、多岐に渡っており、産業界においても、CFDは製品設計や性能評価に欠かせないCAE(computer-aided engineering)ツールの一つとなっています。本演習では、翼型周りの流れやマイクロチャネル内の流れの解析を通してCFDの基礎を習得し、今後研究の過程でより高度なCFDシミュレーションを実行できるようになるための素地を養うことを目的としています。
- 演習の内容
- 演習では、OpenFOAMを用いたCFDシミュレーションを体験します。計算格子の作成、初期条件・境界条件の設定、計算スキームの選定等、解析対象に応じた適切な計算条件を検討し、自力でCFDシミュレーションを実行します。Joukowski翼型周りの流れの解析では、迎角を変えた際の流れ場の変化の様子を観察するとともに、揚力係数・抗力係数を実験値と比較することで、CFDの妥当性及び適用限界を確認します。また、マイクロチャネル内の液滴挙動の解析では、流路幅や濡れ性、せん断速度等が接触線の移動に与える影響を検証し、マイクロチャネル特有の流体現象を考察します。これらの演習を通して、物体周りの流れや気液二相流のCFDに関する基礎力・実践力を養います。
3年Aセメスター創造設計演習内選択演習 マイクロものづくり演習 [MEMS演習]
- 演習の目的
- 我々の身の回りには、微細なセンサやスイッチ、集積回路、発電・エネルギーデバイスといったナノ・マイクロメートルスケールの微細加工技術や集積技術によって作製されたものが数多く存在しています。この演習では、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)の原理や製作技術の理解を通じて、「マイクロものづくり」を学びます。機械系四力学や設計の知識だけでなく、学術論文や文献の調査も行い、最先端のナノ・マイクロデバイスの設計、製作、計測や評価に挑戦します。
- 演習の内容
- ナノ・マイクロスケールの微細加工技術や集積技術を学びながら、CADや数値シミュレーションを用いてデバイスを設計、自ら作製し、その性能や機能の計測・評価を行います。グループごとにテーマを設定し、関連する最新の学術論文・文献を調査、それらを参考にしてデバイスを設計します。詳細なデバイス構造の設計をすると同時に、デバイスの加工・組立手順やクリーンルームでのプロセスを検討し、実際にクリーンルームでの作製(フォトリソグラフィ、金属やポリマーなどの成膜、エッチングなど)を行います。
3年Aセメスター創造設計演習内選択演習 シミュレーション演習
- 演習の目的
- 現代のものづくりではコンピュータを活用したシミュレーション技術は既に必須の道具となっており、その活用の場は今後もますます増加していきます。一方で、シミュレーションを上手に活用するためには、単にソフトウェアの操作方法を知るだけでなく、実際に裏ではどのような規則、手順のもと計算が行われているのかを理解することも重要です。本演習では、実際にシミュレーションプログラムを開発する体験を通して、その基礎技術や考え方を学びます。
- 演習の内容
- 本演習では2次元の粒子シミュレーション(個別要素法、分子動力学法)や有限要素法を題材に、まずそのアルゴリズムの一部についてコーディングを行い、実際にシミュレーションを作成することを体験します。その後、これらの基礎プログラムを活用してそれぞれの興味に応じたオリジナルのシミュレーションプログラムを作成します。「こんなことをシミュレーション上で実現するためにはどうすれば良いか?」という問いから実際にシミュレーションを作り上げるまでを経験します。また、選択演習では希望すれば担当教員の研究分野に関連するシミュレーションを体験することも可能です。
3年Aセメスター創造設計演習後半 プレ卒論(各研究室に配属され活動)
- 演習の目的
- 2022年度より、創造設計演習の後半では、各研究室にて活動する「プレ卒論」を開始しました。4年生で本格的に卒業論文として「研究」を行いますが、その体験という位置づけです。研究は、例外なく仮説・立証のプロセスを経て行われます。研究だけでなく製品やサービスのデザインなど、世の中の創造的活動すべてに必要なスキルです。「研究」を通した演習を、機械系の全研究室で提供し、具体的な研究活動を体験してもらう演習です。
- 演習の内容
- 創造設計演習の後半15回を用いて、配属された研究室で、具体的な研究テーマを対象に、最先端の「研究」を体験してもらいます。スターリングエンジン演習・メカトロ演習・デジタルデザイン演習・マイクロものづくり演習・シミュレーション演習よりもディープなテーマに携わることで、実際の社会課題に触れることができます。各研究室の教職員だけでなく、4年生、修士博士学生、研究員の方たちのサポートを受けながら行いますので、4年生に進学したときの研究室生活を体験することもできます。